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漫画レビュー『フイチンさん』 の満州ピジン中国語

本のレビュー

 

日本語教師の吉田美登利です。

 

今日ご紹介したいのは、マンガ『フイチンさん』。

昭和30年代に、日本の少女の間で大人気だったというマンガです。

戦前のハルピンが舞台という事で興味を持ち、

以前、映画化された時(2004年)に、劇場に見に行きました。

 

 

今回ハルピンから帰って、漫画の方も読んでみたくなり購入。

 

ハルピンの富豪リュウタイ家の門番の娘として生まれたお転婆娘のフイチンと、彼女がお守りをするリュウタイ家のわがまま坊ちゃんリイチィウを中心とした、ハラハラドキドキのストーリー。

 

登場人物がとにかく明るくて、元気いっぱい。

読んでいて楽しくなるマンガです。

 

主人公が中国人の女の子。舞台設定はハルピン。

当時の異国情緒あふれるハルピンで、ロシア人、日本人、モンゴル人が

次々現れ、カタカナで書かれた中国語、ロシア語、日本語が飛び交う世界観が

昭和の女の子達の間でとても人気を博した、というのは、意外にも思えます。

 

天井の高い中国風のお屋敷と、ロシア教会。

郊外のレンガ造りの家とポプラ並木。

マイナス30度の雪の世界と、春に満開になるライラック

 

風景ばかりが描かれているわけではないのですが、

ハルピンの空気感が良く伝わってくる描写です。

 

文の中には、カタカナの中国語(後ろに日本語訳)が沢山混じっています。

(もちろんロシア語もモンゴル語も少し。)

 

「つれてってあげるよ ライバー(おいで)」

「きみたちもしんせつね シェシェ(ありがとう)」

といった感じで。

 

しかも、東北の香りのするハルピン中国語(注:ハルピン人は北京人より

キレイな中国語を話す、と当地の人は自慢に思っている)が

カタカナで再現されているので、私としては懐かしくてたまりません。

 

ただ、上記のカタカナは中国語としても自然な感じですが、

中国語として誤用?あまり聞いたことのない用法?

と思えるもの見当たります。

(例)「シェンティ(元気)すぎて困るわよ」p.50

 

最近知ったのですが、満州で使われていた「ピジン中国語」

というものがあったそうです。

これは、当時の日本人と中国人が意思疎通するために生まれた、中国語と

日本語が混ざったような言語です。それを、最近この本を読んで知りました。

 

 

この本には 「アルヨことば」がどう生まれたか、とその進化について

分かりやすく書かれています。

(日本語が専門でない人でも読みやすい本だと思います!)

 今でもこのアルヨことばは「萌えキャラ」に使われているそうですね。

 

『フイチンさん』を書いた上田としこ先生には

映画が上映された時にお目にかかるチャンスがありました。

大変な時代を生き抜いた 強さを持っていることが一目で分かるような

素敵な女性でした。

 

この漫画は、元気を出したい時に読むのにぴったりの漫画だと思います。

平成女子にもお勧めです。